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Why Jellyfish Collagen?

クラゲの大量発生と地球環境問題について

 クラゲの大量発生は、海水を取水している発電所や化学プラント、ビーチリゾートなど工業や環境業に影響を与えているほか、海洋生態系のバランスが変化させて魚類資源の減少を引き起こしています。さらにCO2排出量の増加にも寄与するため、気候変動の助長につながっている可能性があります。ここでは、クラゲの大量発生が環境問題を引き起こしてしまう仕組みについて説明します。

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海洋の食物連鎖

 海洋生態系のバランスは食物連鎖によって絶妙に保たれています。海洋の食物連鎖は魚類を主体にするもの、微生物を主体にするもの、の2種類に分類されています。まずは魚類を主体する食物連鎖を紹介します。食物連鎖は小さな生物がより大きな生物に消費されることがベースになっていますので、大きな魚であっても卵や稚魚などの成長の過程ではその時点でより大きい生物に消費されることもあります。クラゲは海洋の食物連鎖のなかでは中間に位置しており、節足動物や甲殻類などを消費して、魚やウミガメなどに消費されています。このような循環の中で海洋生態系の絶妙なバランスが保たれています。

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L. A. FuimanTara et al., Ecology, 96(2), 2015, pp. 362–372

クラゲの大量発生による海洋生態系の変化

 魚やウミガメなどの乱獲によってクラゲを消費する生物が減少してしまうと、クラゲが大量発生して過剰のクラゲが魚卵や稚魚を大量に消費して相対的にクラゲが増加します。これが繰り返されると、いずれは海洋生物資源は枯渇してクラゲ中心の生態系に変化してしまうことが危惧されています。これを模式的に示したのが下図です。下図中の”AVANT(以前)”は正常な海洋生態系ですが、下図中の”APRES(以後)”のようにクラゲだけの海になっています。このような状況を回避するためには漁業資源の乱獲を防ぐことが必要です。しかしながら、すでにクラゲが大量に発生している海洋環境において乱獲を防ぐだけでは自然に任せた形での漁業資源の回復は困難です。つまり乱獲の防止とともに、大量発生したクラゲを積極的に採取して環境中のクラゲの量をコントロールすることが不可欠と考えられます。

クラゲの大量発生とCO2の排出

 上述のように、魚類を主体とする食物連鎖のほかに、微生物を主体とする”MICROBIAL LOOP(微生物ループ)”と呼ばれる食物連鎖があります。大型生物の分解物などの溶存態有機物を細菌(Bacteria)が消費し、細菌を原生生物(Cilitates)が消費する食物連鎖です。さらに原生生物を甲殻類(Copepods)などが消費し、この甲殻類や植物性プランクトン(Phytoplankton)を魚類(Fish)が消費する食物連鎖につながり、これが正常な食物連鎖です(下図A:Before)。しかしクラゲが大量に発生することで、甲殻類の大部分が魚類ではなくクラゲに消費されると、微生物ループがクラゲの増加にリンクした新たな食物連鎖が生じてしまいます。この食物連鎖では大量のクラゲ分解物(Jelly-C)を細菌が分解する際に大量のCO2が排出されます(下図B:Present)。クラゲの大量発生がおこっている今日ではすでに下図Bの状況になってしまっています。つまり、クラゲの大量発生は魚類資源の減少だけでなくCO2排出量の増加にも寄与して気候変動を助長している可能性があるのです。 これら地球環境の破壊をクラゲが望んでいるとは思えません。私たちはクラゲを適切に有効に活用することで地球環境の保護保全への貢献を目指しています。

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RH Condon et al., PNAS 108(2011)10225-30
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