ABOUT US

クラゲの有効活用

潤沢な未利用資源

 下図は世界のクラゲ発生マップです。クラゲは世界中で大量に発生しており、観光や工業、漁業に甚大な被害を及ぼしています。クラゲの大量発生によって、ビーチリゾートが閉鎖に追い込まれたり、海水を冷却水として取水している各種プラントにとっては安定稼働に重大なリスクを与えます。漁業者にとっても漁獲量の減少だけでなく漁具の破損も引き起こすため深刻な問題になっています。

 クラゲの大量発生は、気候変動や魚介類の乱獲の他、富栄養化や人工海岸の増加など様々な要因が入り組んだ結果として引き起こされており、簡単に解決できる問題ではありません。莫大な発生量のために放置にすることも問題ですし、廃棄するにも多大な費用が費用が必要なため、なかなか一筋縄にはいかない問題ではありますが、一方で裏を返すと、これほど潤沢に存在する未利用資源(バイオマス)は他にないと言い換えることが出来ます。

クラゲの有効利用

 バイオマスの利用については「バイオマスの5F」と呼ばれる活用方法の原則が知られています。これを示したのが下左図です。縦が付加価値、横が活用量を示しています。バイオマスの5F、つまり、Fを頭文字に持つ食品(Food)・繊維(Fiber)・飼料(Feed)・肥料(Fertilizer)・ 燃料(Fuel)のそれぞれ分野への活用を付加価値の高い製品からはじめて徐々に製品単価が低く量が求められるセ品群に多段階にすべてを利用することで、活用​事業成立の可能性を高めていくというものです。

 クラゲの活用方法は大学や研究機関によって食品・繊維(バイオプラスティック)・飼料・肥料など様々な分野において多数のシーズが報告されてきました。しかしながら、それぞれ単体では市場性や採算性の観点から事業として成立させるのは困難でした。このような状況のなか、海月研究所はクラゲ中のコラーゲンやムチンを高純度に抽出製造する方法を世界ではじめて確立しました。コラーゲンやムチンは食品の他、化粧品や医療の分野でも活用の可能性があることから食品以上に高い付加価値の利用も期待できます。そこで、まずは付加価値の高い食品や化粧品の分野の製造販売を通して事業基盤を確立して、繊維、飼料、肥料など様々な分野への活用にも展開するともに、最も高い付加価値の医療分野への応用にも挑戦する、クラゲの有効活用の新モデル「クラゲ活用のMC+5F」に基づいてクラゲの有効活用の事業化を実現しようと考えています。

バイオマスの5F
クラゲ有効活用の「MC+5F」モデル

海洋環境の保全に向けて

 近年、世界の需要の高まりから魚介類の乱獲が止まらず、水産資源の枯渇が叫ばれています。クラゲは魚卵や稚魚を捕食しますが、大部分は魚介類に捕食されることで生態系のバランスが保たれてきましたが、ひとたびクラゲが大量に発生すると、その大量のクラゲによって大量の魚卵や稚魚が捕食されてしまうため、水産資源の減少に一層の拍車をかけることになります。スウェーデンの海洋ジャーナリストは、このままでは「いずれ海の生物はクラゲだけになってしまう!」と警鐘を鳴らしています。

 クラゲの大量発生の原因は、地球の温暖化、海洋汚染、魚介類の乱獲、人工海岸の増加など、様々な要因が考えられていますが、その原因は特定されておらず、根本的な解決には至ってません。クラゲの大量発生自体が水産資源の減少にアクセルをかけるという悪循環に陥るだけでなく、CO2排出量の増加にも関与することも指摘されています。

 では海からすべてのクラゲを除去してしまえばよいかというと、そう簡単な話ではないようです。海洋環境が健全な状態であれば、魚介類や水生動物の成長のためにクラゲの99%は消費されていると言われており、クラゲは海洋の食物連鎖のなかで重要な役割を担っています。したがってクラゲをゼロにしてしまうことも生態系のバランスを乱すことになってしまいます。私たちは局所的に大量発生したクラゲを陸上に水揚げして積極的に利用することで、その海域のクラゲ発生量をコントロールし、生態系のバランスを整え、海洋環境の保全につなげたいと考えています。(関連リンク:クラゲの環境問題について(特別ページ)

クラゲの有効活用と私たちの最終目標

 クラゲの異常発生による漁業被害の軽減を目的にスタートしたクラゲの有効活用の事業化ですが、事業を通じて地球の未来を守っていく持続可能な社会の実現に貢献したいと考えています。

 クラゲから抽出した素材を医療分野へ応用する研究開発は海月研究所だけでなく、世界でも複数の企業が取り組んでいます。これはクラゲが単に未利用のバイオマス資源として注目されているのではなく、医療用の素材としても潜在的な可能性があることを示す一例です。他にもクラゲたんぱく質の特性を活かした機能性食品素材としての利用、魚介類の飼料や植物の肥料として利用することによる生産性の向上、さらにクラゲは1年で数千倍にも成長することからクラゲ自体を食糧するなど、様々な活用の可能性があります。さらに、このクラゲの有効活用それ自体が海洋環境の保護保全につながりますし、持続可能な産業として開花させることで新たな雇用の創出につながることが大いに期待できます。

 これらの考えは、1987年に国連の環境と開発に関する世界委員会で発表された報告書”Our Common Future”の「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」の思想に通じるもので、2015年に国連サミットで採択された2030年までに達成するべき国際目標「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」にも合致すると考えています。

 私たちは単に利益を追求するだけではなく、研究開発を主体としたクラゲの有効活用事業を通して、経済・社会・環境の3つのバランスのとれたビジネスモデルを確立し、「地球上のすべての人々が幸せに暮らせるような社会、ずっと地球に住み続けられるような社会」の実現を最終目標に努力を続けてまいります。

© 2021 by Jellyfish Research Laboratories, Inc.